読解力はあらゆる学問の基礎
国語の読解力は、あらゆる学問の基礎部分となるものです。
難易度の高い大学に合格し、その後に、司法試験、会計士、税理士、医師の国家資格、薬剤師などなどさまざまな国家資格をチャレンジするのであれば、 国語の読解力は養っておかなければなりません。
わたしは、高校生に数学や理科を教えたりもするのですが「国語の読解力の弱い子は、理系の科目でも伸び悩むなあ」と毎回感じております。
話を少し横道にそれます。高校生の数学は参考書の解法を倣って 問題の解き方を身につけるのですが、国語の読解力のない生徒は、記号や数字への注意力が散漫で、参考書に書いてあるポイントを読み取ることができなかったりします。
たかだか100字程度の活字で書かれていることすら、読み落として いるのです。そういったときは、わたしは生徒にその100字を音読させます。音読をするとさすがに気づいてくれるからです。
読解力がある生徒は読み落としがほとんどなく、解き方で意図してあるものをすんなり理解します。 国語の読解力が低くてもセンターの数学ⅠAは78割近くとれるでしょうが、数学ⅡBでも高得点を狙うには、参考書を丁寧に読みほどく国語の読解力が重要になってきます。
早稲田大学なども、英語がかなり難しいので、一見すると英語力の差が合否を分けると思いがちですが、早稲田大は、合格するレベルの生徒達は、英語力はほぼ横並びの水準まで達しているので、実は、国語の読解力の差が合否を分けているのです。
このように、国語の読解力があるかないかは、後々の勉強にまで影響を及ぼすので、できるだけ早い機会に養っておくことが肝要です。
「読解力の基礎」の項目で、最初は随筆文を読んで読解力の基礎をつけることを説明しました。
では、随筆文の次はどんなジャンルの文章を読んだらいいのでしょう?
それは、説明文です。「え?小説文じゃないの?」「説明文は、一番苦手なジャンルだよ」「小説文かと思った」「論説文のほうがいいな」といった声が中学生諸君から聞こえてきそうですが、説明文の読解こそが総合的な読解力をあげるために、最も重要なジャンルの文章なのです。
説明文は理科学、自然科学、動植物学、社会科学といったジャンルのわりあいに専門的なことがらを説明した文章です。事実を詳しく述べていて、筆者の意見や考えが少ないのが特徴です。それでも筆者の考え方や意見や感想は少しは混じっています。
説明文は、事実が豊富に語られているので、それらの事実を、細かな注意を払って丁寧に読むことが重要です。
つまり説明文を読むという作業は、文章を丁寧に読む、精読するという、読解力を鍛えるために必要な取り組み方と完全に一致しているのです。
小説や随筆は少々読み飛ばしても、ポイントとなる段落や部分だけ押さえれば大意はつかめます。説明文はそれに比べて、書かれている事実はしっかり押さえなければ、文章の内容がわからなくなりやすいです。
こうしたことから、精読の仕方を身につけるのに説明的文章が最良なのです。
辞書を引きながら説明文を読む
説明文は、専門的なことがらに踏み込んだ内容となる場合もあるので、使われている用語も初めて見るものがあったりします。
そのため、辞書で必ず意味を調べ、文章の内容を曖昧でなく、しっかりと把握したほうがよいでしょう。
また、語句ノートを作成し、調べた言葉の意味を書き写すと、文章を書くコツみたいなものが次第に身についていきます。
辞書で意味を調べる、調べた意味をニートに書き写す作業は時間がかかるし、面倒なものですが、読解力に加えて、書く能力も確実に高めてくれるので、高い実力を身につけたい、トップランクの高校・大学に進学したいという人はぜひチャレンジしてください。
普段の学習で説明文を多く読んでおくことにはもう一つの効果があります。
それは入試で出題されやすい、さまざまな分野のテーマについて、一般的な知識をあらかじめ身につけておくことができるという点です。
高校入試では、説明文や論説文で出題されやすいテーマというものがあります。地球温暖化の問題、環境破壊の問題、日本人の美意識、長年にわたって培ってきた日本人のものの考え方などなど。
今まで誰も読んだことのないことがらをテーマとした説明文は、入試では出題されません。いろいろな県で過去に何度か出題された分野の説明文が出題されます。
なので、入試問題で出題された説明文を読み、そこに書かれていることがらを知識で持っておくというのは、とても役に立つことなのです。入学試験で地球温暖化の原因と対策についての文章を初めて読むより、同じテーマの文章を読んでおいて、入試の場で改めて読むのでは、読み取りの正確さや速さが大きく異なるでしょう。
説明文の入試問題はやさしい
随筆文は文章は易しいが、設問に記述問題を混ぜたりして、問題の方は難しく作られる傾向があると、先に書きました。
そして、その逆をいくのが説明文です。
説明文は文章に書かれていることがらを正確に読み取ることができているかどうかをチェックする設問が多いです。
だから文章さえ正確に読めれば、正答を得やすいのです。
説明文には記述問題もありますが、こちらも文章中の言葉を少し変えるだけの解答になる問題がほとんどなので、記述問題が苦手な受験生も正しい解答を書くことができます。
普段の学習が一番得点につながるのは、読解分野では説明文だと思ってください。
読むべき説明文
読むべき説明文についても、全国の都道府県の公立高校の入試問題が良いです。理由は随筆文と同じ。やさしすぎず難しすぎず、ちょうどのレベルの説明文が多く読めます。
ただし、随筆文と異なるのは、一冊の本をしっかりと読むのはかなり有効だという点です。日本の住宅や日本人の美意識について書かれた数ページの長さの文章を読むだけよりも、そのジャンルの本を一冊まるまる読んだ方が、深い知識を分かりやすく得ることができるからです。
さらに、高校入試で取り上げられたテーマと同じテーマは、大学入試でも取り上げられやすいということがあります。中学の時に説明文を読んで、さまざまなジャンルへの理解力を高めることは後々まで役に立ちます。
説明文と論説文の区別は難しいのですが、筆者の意見や考えがあまりなくて、いろいろなことがらの事実を列挙していれば説明文だと思ってください。文章の全体をざっと読んで「これは専門的なことがらをいろいろ説明しているな」と思ったら丁寧に読んでいけば良いのです。読むさいはノートにメモをとり、書かれて射ることがらある程度覚える努力をしてみるといいでしょう。ただし無理に頑張って覚える程ではありません。繰り返し読むうち、自然に頭に入ってきますから。
説明文の読解力を磨けば、人生の武器になる
冒頭に述べたように、国語の読解力は国語だけにとどまらず、将来の資格試験にも役立ちます。今は中学生だから将来のことを語られてもピンとこないでしょうが、多くの人が、やがては自分が興味のある仕事について資格をとりたくなるでしょう。
資格をとるための試験に合格するために、その分野の専門的なことがらをしっかりと理解し覚えなければなりませんが、その時に役立つのは、読解力の中でもとりわけ、説明文の読解力です。小説や随筆はあまり関係ないのはわかりますよね。
ですから今後の人生を見据えた場合、説明文の読解力は苦労しても伸ばした方が良いのです。