これは私が、塾で生徒を教えてきた経験に基づいた感想なのですが、字を丁寧に書く子は必ず成績が上がります。そして、字を丁寧に書かない子は成績が全く上がりません。これらの事実は小学生、中学生、高校生のすべてに当てはまります。
字を丁寧に書くというのは、きれいな字、上手な字を書くというのではありません。字には上手い、下手があります。上手に書こうと思っても書けない人もたくさんいます。さささっと書いても上手な人もたくさんいます。
ここでの字の丁寧さというのは上手、下手ではなくて、一字一字、彫刻刀で版画を掘るように、ノートに刻むように丁寧に書くということです。草書体でさささっと書くようなものではなく、字の一画一画を書き流すのではなく、一画一画を刻むように止めつつ書くのです。
こういう書き方だと、字を書く時間は遅くなります。字を書く時間が遅ければ、勉強のスピードも遅くなります。思考のテンポも遅くなりそうです。また、字を書くのに意識がとらわれすぎて、ものごとを考えるのがおろそかになると思いがちです。
けれどもそこが勘違いなのです。字をノートに刻むように一画一画を丁寧に書けば、丁寧に書こうという意識によって集中力や緊張が高まります。その緊張の高まりは、習っていることへの暗記を容易にします。また、ゆっくり書くことで、自分の思考のテンポと文字を書くスピードにバランスがとれ、書きながら考えるということができてきます。
ですから、成績の悪い子ほど、字を丁寧に書くことで理解も暗記もしやすくなり、勉強への集中力も増して成績が良くなるのです。
これが顕著な科目は英語と数学です。英語は教科書に印刷されたアルファベットの字体を真似て書かせます。すると、特に練習しなくても英単語は、すぐに覚えてしまうようになります。
数学は計算問題の、途中の計算での数字や文字までも丁寧に書かせます。生徒が計算を急ぎたくても、丁寧な字で書かせます。するとケアレスミスも減り、応用問題の理解も高まります。
ただし、これは頭の回転の速い、字頭が優秀で、県トップの高校にも余裕で合格しそうな子や旧帝大の理系学部もすんなり原と現役で受かりそうな子にはあてはまりません。彼らは頭の回転が速く、理解力や暗記力も強いのだから、文字を丁寧に書くということを、足かせのように思考に、はめ込んではいけません。1000人中5番以内に入るような子は、字は汚くても問題はありません。