英文法が苦手だという中学生は多くいます。ある学術調査では、中学1年生の4月の時点では、9割以上の生徒が、英語の授業が楽しいという気持ちを持っていることを明らかにしていました。それが中学1年生の9月になると、全体の5割が、英語の授業がつまらないという気持ちに変わったそうです。理由は、英語のことばのきまりが理解できない、英語を頑張ってもできるようになる気がしない、ということでした。中学2年生になると英語が嫌いな生徒は7割までふくれあがります。理由は9月に脱落した生徒らと同じものです。
これは、生徒らも自覚している通り、英語の言葉のきまり、すなわち英文法の理解が、しんどいからです。
これを解決すべく、チャレンジの通信添削で有名な進研ゼミは、英文法についてのある習得法を打ち出していました。チャレンジは、公立中学校の学習内容の理解力や試験の成績が、ちょうど平均程度の生徒を対象として教材を作成しています。数年前、私は仕事で使うために「得点力学習」という任天堂DS用の学習ソフトを購入しました。中学校の5教科の学習ソフトで、チャレンジ進研ゼミのベネッセが製作し、販売していました。(今はもう販売していません)
このソフトでの中学生の英語の習得法は、英語が苦手な中学生にとっては、非常に有効なものでした。
それは、英文法的な説明を一切行わず、すべて熟語として暗記するものでした。
たとえばto不定詞の名詞的用法ならば、「to不定詞の名詞的用法=~すること」という説明は一切行わず「like to~=~することが好きだ」と熟語化して覚えるということです。熟語化したものは非常に多くなりますが、音読によって反復すればけっこう覚えられるます。ですから、量の多さは、中学生らの苦にはならないようです。それに中学校で習う単語も文法事項も少ないので、英文法を熟語化しても、熟語化したそれらの数は多くありません。
この熟語化、あるいは慣用表現化は徹底していて、助動詞のmustなどもこれでやってしまいます。「You must~」というように熟語化しています。「あなたは~しなければならない」です。疑問文ならば「Must I~」「私は~しなければならないですか?」とします。Mustは助動詞なので、文の先頭にMustを置くという説明はありません。
私はこの教材を参考にして英語が苦手な中学生に、英文法を教えました。たくさんの例文を音読させ、英文法は熟語として理解させました。生徒が熟語化した語句に十分に慣れ親しんだ後、英文法の説明を加えました。その結果、その生徒は、中学校の中間テストや期末テストが30点台だったのが、2ヶ月で80点以上とれるようになりました。