普段の勉強で、勘違いして問題が解けずに悩んでいたり、テストのときケアレスミスをして得点を落としたりすることがあります。
この勘違いやケアレスミスは、実力が十分に培われていないから生まれるのだと考えている人がいます。実力が高まれば、勘違いもケアレスミスも減るのだというのです。
確かに実力が培われれば、勘違いやミスは減ります。けれども、勘違いやケアレスミスの根本的な原因は、私が塾で生徒らを教えた経験ではもっと違うものだと考えます。
その根本的な原因というのは精神的な疲労だと、私は考えます。精神的な疲労、そして疲労の蓄積の結果、脳の働きが鈍化し、注意力が弱まり、勘違いやケアレスミスを作り出すのです。
そしてこの精神的な疲労や、疲労の蓄積は、テレビゲームやスマホのゲームアプリによってもたらされることが特に多いのだと考えます。
私がそう考えるようになった例を2つあげます。1つめの例は、私の塾に通う中学1年生の男子です。この生徒は学力が全般的に高く、特に数学の理解力と応用力が素晴らしいです。県立の上位高をめざしているので、塾で先取り学習をし、中学1年生の夏には、3学期の空間図形の内容を教えていました。普段は問題の意味を勘違して読み込むこともありませんし、計算でのケアレスミスもしません。けれども、祝日の月曜の夜の授業で、90分のうち、10回以上、勘違いやミスをし、学習量は普段の半分ほどしかこなせませんでした。生徒は、これといって疲れた様子や眠そうな様子もありませんでした。生徒本人も、その日に限ってミスが多いことに驚いていました。私は、生徒に昼間、どんなことをやって過ごしたか尋ねました。すると、3連休だったので、その日は朝9時から午後5時までプレイステーション4でテレビゲームをずっとやり続け、夕ご飯を食べてから塾に来たと言っていました。日曜日も6時間ほどテレビゲームに集中して遊んでいたそうです。
もう1つは、中学3年生の女子生徒です。その女子生徒が小学5年生のときのことです。その生徒はディズニーのファンで、ミッキーマウスが登場するゲームアプリをスマホでしょちゅう遊んでいたそうです。平日は2時間から3時間をそのアプリに費やし、土曜や日曜や祝日は、1日中そのアプリで遊んでいたそうです。両親は、自分の子どもが、ゲームアプリにはまっているのを全く気づきませんでした。小学5年生になって、そのゲームアプリにはまり、小学校のテストで不注意なミスが著しく増え、成績も下がってきたので、両親は、塾に通わせればなんとかなるかもしれないと思い、私の塾に連れてきたのでした。
ある意味幸いなことに、それから2ヶ月ほどして、その生徒のスマホが壊れて、ゲームデータが全消去することが起きました。その生徒は課金は全くしなかったのですが、運良く手に入った、重課金し続けてようやく入手できる非常にレアなアイテムがなくなり、もう1度初めからやるのも虚しくなって、アプリゲームはやらなくなりました。もともとゲームが好きというより、ミッキーマウスが好きで始めたゲームでしたので、アプリゲームから離れるのは難しいことでもなんでもありませんでした。ゲームをやらなくなって勉強時間が植えたわけではないのですが、ミスや勘違いが減り、成績が大きく伸びました。
この2つから言えることは、人の注意力というのは、量が決まっているということです。たとえば、朝起きたとき、その注意力は100あるとします。また、注力には個人差があり、60の人もいれば150の人もいます。この注意力は遊び、勉強、運動、仕事とどんな活動でも消費されます。道路を歩いていても注意力は使われます。そして、1日を通じて消費され続けた注意力は、夜、寝るときには例えば、30まで減ったとします。1日の活動で70使ったのです。そして、睡眠によって注意力は回復し、翌朝には再び100になります。
この注意力の消費量は、テレビゲームやスマホのアプリゲームだと非常に大きいと私は考えます。1つは目を使うためです。画面を凝視し、敵、モンスター、主人公、乗り物など画面上のさまざまな動きに素早く反応しなければなりません。これは視覚を非常に使うということです。視覚をよく使った場合の精神的な疲労は非常に大きなものになります。けれども、ゲームは映像が綺麗で刺激に満ちており、楽しさもあるので、精神的な疲労に中々気づきません。他の活動に比べて非常に疲れやすく、それでいてその楽しさのために長時間遊べてしまうので、注意力は、自分でも気づかないうちに大きく減ってしまいます。それで、生徒は、自分が意識しないだけで、精神的には大きく疲れている状態に陥ることになるのです。
また、もともとある注意力100のうち100を使って残りの注意力は0、ひどいと120を使って夜寝るときには注意力はマイナス20になったりします。翌朝になっても最大まで回復できず、注意力85からスタートしたりします。
こうした注意力の消費を抑え、勘違いやケアレスミスを減らすにはどうしたらいいでしょう。それはゲームをやらない、あるいはゲームをやる時間を減らせばいいのですが、中々簡単にはいきません。ゲームは楽しいものです。
そこで、ゲームで遊ぶ時間をコントロールしつつ、コントロールできずにやり過ぎてしまった時は、寝るというのを提案します。ゲームをやりすぎて注意力が減った場合、勉強をやってもうまくいきません。うまくいかないのだから、勉強の効率は落ちます。それなら、思い切って寝て、注意力を回復させ、その後で改めて勉強に向かうようなものです。平日なら翌朝まで寝て、休日なら1時間ほど昼寝をして、改めて勉強にとりかかるのがよいです。
決してやってはいけないのは、ゲームで疲れたから、他のことで、例えば漫画や友達との遊びで気分転換を図ってから、勉強をするというものです。漫画や友達との遊びは、ゲームほどではありませんが、注意力を消費しますし、ますます勉強ができる状態から遠ざかることになります。それらによって気分は切り替わっても、勉強に必要な注意力は不足したままです。