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なぜ露点が実際の水蒸気量と関係するのか?

中学2年生理科で、次のような問題があったとします。

室温が30°Cの部屋で、金属製のコップにくみおきの水を入れ,このコップに氷水を加えていった。コップの水の水温が15°Cになったとき、コップの表面が白く曇り始め、小さな水滴が付き始めた。

下記は、気温と飽和水蒸気量との関係を示したものである。

このときの室内の湿度を求めなさい。

[資料]気温・・・飽和水蒸気量

0℃・・・4.8g/㎥    5℃・・・6.9g/㎥    10℃・・・9.4g/㎥

15℃・・・12.8g/㎥   20℃・・・17.3g/㎥   25℃・・・23.1g/㎥

30℃・・・30.4g/㎥   35℃・・・39.6g/㎥

解き方と解答

湿度の公式は

[実際に1㎥中に含まれている水蒸気量÷その気温での飽和水蒸気量×100=湿度]です。

この公式を使います。

➀ まず初めに「実際に1㎥中に含まれている水蒸気量」を考えます。コップの表面に水滴が付き始めたときの水温が、空気中に実際に含まれる水蒸気量と関係しています。この問題では水温は15℃です。資料を見ると、気温15℃の飽和水蒸気量は12.8g/㎥なので、実際の水蒸気量は12.8gとなります。

コップの水温15℃→表の気温15℃が示す水蒸気量をみる→この水蒸気量が実際の水蒸気量になる

という流れです。

② 次に飽和水蒸気量を考えます。室温が30℃なので、資料を見ると気温30℃の飽和水蒸気量は30.4g/㎥なので、この値を使います。

③ ➀と②の値を公式に代入します。

12.8÷30.4×100を解いて、およそ42.1%となります。

また、コップの表面に水滴が付き始めるときの水温を『露点』と言います。露は「つゆ」、点は「温度」という意味を表しています。露点は正確に言うと「空気中の水蒸気が水滴となるときの温度」ということです。

露点の説明が今ひとつ分からない人のために詳しく説明します。

まず水蒸気について述べます。水蒸気は、水が気体になったときの状態です。水は100℃で沸騰します。沸騰というのは、お湯がゴボゴボと泡を盛んに出している状態です。水は沸騰しているときに盛んに水蒸気に変わりますが、100℃になってはじめて水蒸気になるというわけではありません。水は1℃でも2℃でも10℃でも水蒸気へと状態を変えています。冬の室内で気温が10℃でも水そうの水が蒸発して減っているのは、水が水蒸気に変わって空気中に逃げていくからです。

また、水蒸気は無色透明です。全く見えません。お湯を湧かしたときの白い湯気は非常に小さな水の粒の集まりです。状態としては「水」になります。水が非常に小さな粒になって空気中に浮かんでいるわけです。

また、雲や霧も湯気と同じです。非常に小さな水の粒の集まりです。地上付近ですと「霧」、空の高いところですと「雲」と呼ばれるのです。

この水蒸気が、空気中にどれだけ含まれるかは、気温によって異なります。気温が高ければたくさんの水蒸気を含むことができます。気温が低ければ含まれる水蒸気量は少なくなります。

これは水に砂糖を溶かすのと似ています。たとえば20℃の水100gには、砂糖は約200g溶けます。100℃のお湯100gでは、砂糖は約476g溶けます。水温が高れば、より多くの砂糖を溶かすことができます。この水にあたるのが空気、砂糖にあたるのが水蒸気です。水は水蒸気となって空気中に溶けるというわけです。

次に露点について説明します。これも水と砂糖を例にして説明します。100℃のお湯100gに砂糖をたっぷりと投入してみましょう。450gほど投入します。砂糖は100℃のお湯100gには473gまで溶けるので、450gすべてが溶けます。見た目はただのお湯と変わりません。次にこのお湯を冷やしていきます。水の温度が下がれば、溶かすことができる砂糖の量も減ります。そのため、溶けていることができなくなった砂糖の一部は、砂糖の結晶となって現れ、容器の底にたまっていきます。水温が20℃になると、実に273gの砂糖が容器の底にたまるわけです。

このお湯にあたるのが空気で、溶けている砂糖にあたるのが水蒸気です。気温が下がれば、水蒸気も空気中に無色透明で溶けていることができなくなり、姿を現すわけです。水蒸気が姿を変えて現れたものが、コップの表面に付着した水滴なのです。お湯が冷えて水の中にたまった砂糖にあたるのが、コップの表面に付着した水滴というわけです。

そして水蒸気が水滴へと形を変えるときの気温が露点となるわけです。

次に、飽和水蒸気量についても説明します。飽和水蒸気量は空気1㎥に含むことができる最大の水蒸気量です。

それでは、いよいよ、「なぜ、露点と実際の水蒸気量が関係するのか」を説明します。

ここで特殊な部屋を想像してみましょう。その部屋には特殊な椅子が並べられています。部屋の中には水蒸気を擬人化した「水蒸気ちゃん」という子どもがいるとします。水蒸気ちゃんは、部屋の中の椅子に座っているときは無色透明で、姿が全く見えません。水蒸気ちゃんは、椅子に座っていないときはその白い姿が見えます。また、その姿は水滴になっています。

また、部屋の室温によって、部屋の椅子の数は変化します。30℃のときは仮に30個としましょう。そして、25℃では23個としましょう。室温が30℃のときは椅子が30個あり、最大で30人の水蒸気ちゃんが座ることができるのですが、室温が25℃では23個しか椅子がないので、水蒸気ちゃんは最大で23人しか座ることができません。たとえば、30℃で30人の水蒸気ちゃんが30個の椅子に座っていたとします。室温が25℃になれば椅子は23個になるので、23人しか座っていることができず、7人の水蒸気ちゃんは座るための椅子を失います。それで、7人の水蒸気ちゃんは水滴となって姿を現します。

また、椅子の数は、飽和水蒸気量を表します。室温30℃のときの椅子の数30個というのは、水蒸気ちゃんが最大30人まで透明な状態で座っていることができるということです。すなわち、30℃の空気が最大で約30gまで水蒸気を含むことができるということになります。31人目の水蒸気ちゃんは、座る椅子がないので透明なままでいられず、水滴となって姿を現します。普通の水蒸気もまた30gを超えるものについては、水蒸気でいることができないので水滴となります。

ここで、20℃の室温では椅子が17個、15℃の室温では椅子が13個としましょう。そして、次のような状況を想定します。

部屋の室温は30℃です。また、部屋の椅子に何人の水蒸気ちゃんが座っているか分かりません。座っているために透明な姿になっていますから、数えることもできません。30℃の部屋の椅子30個に30人全員が座っているかもしれません。あるいは、水蒸気ちゃんは5人程度しか座っていないかもしれません。

それでは、部屋の椅子に座って透明になっている水蒸気ちゃんの数を調べるにはどうしたらいいでしょう。

それは、室温を下げて椅子の数を減らしていけばいいのです。では、30℃の室温を下げて椅子の数を減らしてみましょう。

室温を25℃にしました。椅子の数は23個です。水蒸気ちゃんは見えないままです。ただの1人も姿を見せません。ということは、23個の椅子に全員が座っているので水蒸気ちゃんは23人以下になります。今度は20℃にしました。椅子の数は17個です。水蒸気ちゃんは全員見えないままです。ということは17人以下になります。さらに室温を15℃にします。そして、15℃にしたとき、1人の水蒸気ちゃんが姿を現し始めました。ということは15℃の室温のときの椅子の数13個に水蒸気ちゃん13人が座っているということになります。15℃よりも室温が下がると、椅子の数も13個よりも減ってしまい水蒸気ちゃんの1人が座っていることができずに、姿を見せるようになります。ここで部屋の中には13人の水蒸気ちゃんがいることが確定しました。

13人の水蒸気ちゃんは、30℃の室温、30個の椅子には全員座っていることができます。椅子に余裕はあります。25℃の室温、23個の椅子でも全員座っていられます。空席があります。椅子は20℃、17個でも空席が全員座っていられます。空席はやはりあります。15℃、13個で初めて空席がなくなります。普通の言い方ですと、15℃、約13gで飽和水蒸気量に達します。これ以上は水蒸気でいられることができず、水滴ができはじめます。15℃が露点となるわけです。この水滴ができはじめるという現象によって、「15℃のときに、水蒸気は空気中に目一杯含まれている状態なんだな、その目一杯含まれている状態が飽和水蒸気量ということだから、15℃の飽和水蒸気量が実際の水蒸気量になるんだな」ということがわかります。