学習への意欲が生徒間で差がある理由
勉強のやる気、すなわち、学習意欲は、生徒ごとでさまざまです。普段から学習意欲が高い生徒もいれば、中間テストや期末テストに対して学習意欲が高まる生徒もいます。一方、中間テストや期末テストの直前になっても学習意欲が低いままの生徒も少なからずいます。
生徒ごとでの、こうした学習意欲の差は、何が原因で生じるのでしょう?
その原因はいくつか考えられますが、1つは学習内容の理解力の差です。教師の説明を聞いたり、教科書やテキストを読んだりして、学習内容がすぐに理解できる生徒は、勉強することに努力や忍耐が伴いません。これに比べて学習内容の理解に時間がかかる生徒は、粘り強く考える姿勢も必要となり、勉強することに努力や忍耐が伴います。そのため勉強は苦行のようなものとなり、楽しさが見いだせず、学習意欲が高まりにくいのです。
もう1つは、学習の成果であるテストの成績です。学習内容の理解・定着の力のある生徒は、努力に応じて良い成績をとることができます。一方、学習内容の理解・定着の力が弱い生徒は、努力しても良い成績を上げることができず、勉強にも、努力にも意義を見いだしにくくなります。そのため、学習意欲が低い状態にとどまりやすくなります。
もう1つは、自分にとって勉強をすることに意義や価値を見いだしているかどうかです。自分には勉強することは意義があり、勉強には十分な価値があると思う気持ちが強ければ強いほど、それだけ学習意欲も高まります。
それでは、勉強に意義や価値を見いだしている生徒にとって、そのおおもとにはどんなものがあるのでしょうか?
それらは幾つもありますが、代表的なものをいくつかあげてみましょう。1つは、将来やりたい仕事が決まっていて、その仕事に就くために学歴が必要であるケースです。もう1つは、仕事は決まっていないが、進学したい高校や大学があって、そこに入学するためには学業成績が優れていなければならないケースです。もう1つは、将来のことは白紙で、進学したい高校や大学もないが、試験で良い成績をとり、親に誉められたり、友達らから高く評価されるのは気分がよいというケースです。もう1つは、良い成績をとれば、自分が欲しいものを親が買ってくれるというケースです。
これらに共通しているのは、勉強し、良い成績をあげることで、自分にとって意義のあるもの、価値のあるものが、何かしら得られるということです。その意義や価値は、生徒によってことなります。先ほどの例でいえば、希望する仕事に就くこと、志望する高校や大学への進学、親や友人からの高い評価、親からの褒美などです。勉強することの対価として報酬があり、その報酬が得られる可能性が高いほど学習意欲が高まるのです。ところで、勉強することの対価として、こうした報酬はあるものの、努力しても良い成績を収めることが難しく、報酬を得る見通しが立てられない場合は、学習意欲は高まりません。
以上のことがらをまとめると、学習意欲が高いか低いかは、学習内容を理解する力の差、努力した結果であるテストなどの成績の差、勉強に意義や価値をどの程度見いだしているか違いによるといえます。
学習内容に対する理解力が高い生徒の学習意欲を高めるには
学習内容に対する理解力が高い生徒でも、学習意欲が低い生徒は少なからずいます。努力すれば良い成績をあげられるのに、意欲が低く、成績は平均程度の生徒です。こうした生徒の場合は、勉強することにどのような意義や価値があるのかを、生徒自身に自ら考えさせるのが良いです。
将来、就きたい仕事があったり、進学したい高校や大学があれば、それらと勉強することの関連性を理解させると良いです。将来のことが白紙であったり、進学したい高校や大学が決まっていない場合は、中間テストや期末テストで、目標を立てさせ、その目標を達成すべく努力することの意義を理解させると良いです。
学習内容に対する理解力が低い生徒の学習意欲を高めるには
学習内容に対する理解力が高い生徒の学習意欲を高めることは、さほど難しくありません。それに比べて、学習内容に対する理解力が低い生徒の学習意欲を高めることは、困難なものがあります。学習内容の理解力が低い、そして、そのために良い成績をあげることが厳しい、その結果、勉強することに意義や価値を見出しにくいからです。
けれども、学習内容を理解する力が弱くても、粘り強く取り組めば、その力は少しずつ養われるのも事実です。そして、成績も少しずつあがっていきます。この少しずつの成長を生徒自身や親がどのように評価するかが重要です。親とすれば、思うように上がらない成績に苛立ち、叱りたくなるものです。ですが、これは成長の芽を摘むことになります。
理解する力が弱くてもなんとか良い成績をとろうと頑張り、それでも思うように結果が出せないとき、叱られるのであれば、子どもとしては、「努力してもしなくても成績がたいして変わらず、それで叱られるなら、何もしないほうがまだいい」と考えてしまいます。
親としては、子どもが努力し、それによっていくらかでも成長が認められたときには、その努力による成長を誉めることが重要です。子どもは、努力したことによって、親からプラスの評価という報酬を得るのですから、努力はその後も継続されます。
勉強以外のことがらに対する取り組み方はしっかりと躾ける、勉強に対する取り組み方については寛容に見守る
勉強の場合、その時点での学習内容を理解する力の強弱が、成績や学習意欲に影響を及ぼします。ですから、勉強に対する取り組み方に熱意がないからといって、ただちに叱っていいものではありません。子どもなりの努力を認め、学習内容を理解する力が育つのを待つことも大切です。
けれども、勉強に取り組む姿勢を育てることは必要です。理解する力が弱いから、取り組む姿勢も熱意がないままでいいというわけではありません。それでは、いつまでも学習意欲が低い状態が続くこともあり得ます。
それでは、熱意をもって勉強に取り組む姿勢をどうやって子どもに身につけさせたらよいのでしょう?
それは、勉強以外のことがら、日常生活のさまざまなことがらへの取り組み方をしっかりさせることです。たとえば、睡眠と起床を規則正しく行わせる、部屋の整理整頓などです。また、スマホやゲームやテレビなどでだらだらと過ごさないことです。勉強以外のさまざまなことに時間を費やすのはいいのですが、それは自分が楽しめることであり、何らかの目的を持った時間の費やし方であるべきです。
ただし、すべての行いにおいて目的が必ずあるという状態は、精神的な緊張を強いる状態が続くことでもあるので、ある程度はだらだらと過ごす時間があるのは良いでしょう。それが生活の大半にならないように心がければ良いでしょう。