毎年2月、大学通信が就職に有利な大学・学部ランキングを発表しています。そして2013年の就職に有利な学部は、理系では薬学部との報が上がってきました。調査対象は、卒業生が100人以上の大学・学部です。
2013年就職に有利な大学・学大学・理系学部で1位となったのは私立大の城西国際大学薬学部。就職率が100%です。千葉県東金市にあります。1992年創立なので歴史の浅い大学です。総合大学で、経営情報学部・国際人文学部・福祉総合学部・薬学部・メディア学部・観光学部・環境社会学部・看護学部(2012年開設予定)があります。城西大学の姉妹校です。検査値は全体的に高くなく、代ゼミの偏差値で43~48ぐらいです。薬学部は43です。入学後しっかり学べる大学なんですね。入学しやすく、卒業後の就職も良いというのは魅力的です。
2位は2校あります。東京理科大の薬学部と明治薬科大学で98.8%です。4位が静岡県立大学の薬学部。初めての公立大学です。1位から10位までは、10位が2校あるので11校がランクインし、6位の富山県立大学の工学部を除いて10校が薬学部でした。1位から50位までで薬学部が何校あるかというと、23校です。1位から100位までは31校です。上位ほど薬学部が集中しています。100位の就職率が89.1%なので、理系がいかに就職に強いかが分かります。他に目立つのは、医療看護系と福祉系、そして工学系です。
私大が強いことの特徴として、薬剤師の育成に力を入れているというのがあります。国立大学の薬学部は研究者の養成、私大は薬剤師の養成という形になっています。また、2006年から薬学部は6年制と4年制の2つの課程に別れました。薬剤師の資格を取るためには、医師の国家資格と同じように6年制を選ばなければなりません。ただし、これは移行措置があるようで、平成29年度の入学者までは4年制コースでも薬剤師の資格をとることができます。こうした制度の変更により、この2年間は新卒の薬剤師は極端に少なく、どの企業も採用が困難でした。今年、6年制に移行してから初の卒業生が出たということも薬学部の躍進の要因の1つです。新卒の薬剤師が2年間いなかったとなれば、これだけの就職率の高さになるのも納得です。
それでは将来の薬剤師の需給はどうなるのでしょう。国家資格を持った人しか当該業務に従事できないという仕事は人気がありました。弁護士・弁理士・公認会計士・税理士・医師・看護師・薬剤師・歯科医師などです。これらの資格で自ら事業を営んでいる人は定年がないので60歳になっても70歳になっても現役で続けることができます。資格を新たにとってその仕事をとる人がいる一方で、仕事をやめる人がほとんどいないというのであれば、その資格を持っていても稼ぎづらくなります。歯科医師は資格をとる人が多く、一方で歯医者にかかえる人が増えるわけでもないし、歯科医師は供給過多になりました。今は不人気の仕事です。公認会計士や税理士は体力は使わないし、職務経験や人脈が生きる仕事なので80歳になっても現役バリバリで続けることができます。この2つも供給過多です。弁護士も法科大学院の設置や司法試験の易化などで、新しく弁護士になる人が急激に増え、また、日本は裁判で解決する風土とはなっていないので、裁判件数も増えることはなく、完全な供給過多です。弁護士の3分の1が年収250万円だとか。フリーターより少し給与がいい程度です。ボーナスが支給されない場合の派遣労働者なみの年収の低さです。
医師は安定しています。需要が高く。医師として働く以外にも研究者の道もあります。
薬剤師は現在、全国に32万人います。そして2028年には40万を超すという見込みになっています。この8万人の増加によって供給過多になるかどうかはなかなか判断できません。
けれども、厚生労働科学研究が「薬剤師需給動向の予測に関する研究 平成24(2010)年度総括研究報告書」で報告したところによると、薬科大学や薬学部の新設などにより入学定員が増加しているため、10年単位で考えた場合、薬剤師が過剰になるという予測を否定できるものはないと述べています。確かに薬科大学と薬学部は増えています。文科省は新設大学への規制をなかなかかけようとしないので、今後も薬学を教える大学は増えそうです。ドラッグストアは、登録販売者という資格を持った人がいれば薬剤師がいなくても一部の医薬品は販売できるようになったので、ドラッグストアが相当数の薬剤師を求めることはなくなりました。病院のそばによくある調剤薬局の出店ペースもだいぶ落ち着いてきました。こうしたことを考えると、もしかしたら薬剤師の需要は下がらないとしても、供給過多にやや傾くので平均年収が下がることはあるかもしれません。この不況で誰もが安定した職業を求めるのは当然ですから、今後も薬剤師の資格を取得する人は増えていくでしょう。