大学入試のセンター試験や受験者数の多い私立高校では、国語の入試問題は全て選択問題だったりしますが、公立高校や難関私立は記述問題を課しているところが多いです。
公立高校によっては課題や資料を与えての自由形式の作文もありますね。
記述問題は短期間で得意になる
記述問題というと苦手な受験生がかなりの数いるのは確かです。国語が得意で難易度の高い論説文もすらすら読める、でも記述問題だけは何も書けず、マスは空白のままなんて生徒もよくみてきました。
記述問題には何か特別な能力が必要、日々こまめに文章を書くとかコツコツとした努力が必要、そう思っている人がとても多くいますし、いろいろな国語教師がそう言っていたりします。
しかし、それは違います。記述問題で正答が書けるのは、能力ではありません。技術さえあれば誰でもすぐにできるようになります。
逆に言えば、文章を書くのが好きで、日ごろ何かと書き付けていたりする生徒でも、記述問題で答えを核技術を持っていなければ、手も足も出ません。部分点しかもらえないような答えしか書けません。
その技術ですが、ざっと20問も練習すれば身につきます。毎日20分の量を10日から20日程度やれば、すらすら書けるようになります。50字ぐらいの長いものもそうです。
ただし、条件があります。文章の内容をある程度は理解していなければ、筆が進まないので、文章の読解力がそこそこあることが条件です。前にもふれた文章の読解力は記述問題でも重要になってくるのです。
記述問題を解く技術とは何だろう?
中学入試の国語には記述問題がかなり出題されます。難関私国立中だと、50字から100字の長いものもあります。私立中学は試験日が同一期間に集中するので、どの中学校も受験生が膨大な数にふくれあがることがなく、採点に時間をかけることができるからです。
多くの進学塾が、国語の記述問題対策に相当な力を入れています。記述問題の単科講座を設けている塾もあります。
昔、日能研の記述問題用の教材を見たことがあったのですが、とても良くできていました。書くための技術も盛り込まれており、そのテクニックは大学入試で有名予備校講師が予備校生達に授けるものとよく似ていて感心しました。1990年頃のことです。その頃すでに、そういった取り組みをしていたのですから、あの時代、日能研が大手四谷大塚を追い抜く勢いで実績をつくっていったのも頷けます。
前置きがながくなりましたが、記述問題を書く技術を、それもきわめて基本的なことから書きます。
まずかなり易しい記述問題について
問題作成者は書き抜き問題を作りたいのだけど、書き抜いた部分がおさまりのいい文や語句になってくれない。そんなとき、書き抜き問題を記述問題に変更します。「ああ、この問題は、初めは書き抜きを作りたかったんだな」というのがよくわかります。
こういった問題は、文章中の言葉をそのままひっぱってきて、文末や語句の最後を、たとえば「~して」から「~する。」とか「~すること」と変えるだけ。これを知っているだけで、易しい記述問題なら完全正答になりますから6点ほどアップします。
やや難しい記述問題。
これは文章中の2カ所から、語句や文を拾ってきて、それらをくっつけること。文の形がおかしな日本語にならないよう、ほんのちょっと言葉を変えます。変える言葉も「~した」「~だった」などを「~と」というように助詞・助動詞を変えるだけ。これも簡単なのですが、知らないと俄然苦手になってきます。問題によっては3カ所をひっぱってくるのもありますが、2カ所の問題と同じやり方なので、すぐに慣れます。
そしてこの2カ所から引っ張る問題の応用パターンがあります。
これも訓練しだいでどうにもなります。それは2カ所から引っ張ってきてそのままつないだら、制限字数をオーバーする場合。30字以内で書かねばならないのに、つないだだけでは40字になったというようなケースです。こういった場合は、余計な部分を10字そぎ落とします。そぎ落としも簡単。出題者はいい加減に字数を決めているわけではないので、余計な修飾語句や、2カ所の語句や文の重複するものを削ればきちんと30字に収まるようにできています。公立高校の記述問題は、だいたいこのレベルまでなので、ここまでできれば国語の合格点はとれるでしょう。
難しい記述問題。
難しいのが文章中の語句や文に、自分で考えた言葉を補って解答を作る問題。これが記述問題の難関です。
文章中から何も書き抜かず、全て自分の言葉で書く記述問題もありますが、こちらは自由度が高いので逆に採点基準は甘めです。他の受験生と同じ程度の点数は誰もとれるので大丈夫です。
文章の言葉+自分の言葉の記述問題はさすがに慣れや、国語の語彙力も必要ですが、ここまで要求されないので、あまり気にする必要はありません。記述問題は部分点をもらえるので、書き抜き部分が正しければそれなりの点数は獲得できます。
自分が難問が解けない場合は、他の受験生も解けないものなので、合否への影響はあまり大きくないです。逆に標準レベルの問題の取りこぼし、実はさほど難しくない記述問題でのとりこぼしが合否に関わってきます。
そうは言っても、記述問題の難問にも正答が書けたらいいですよね。最難関大学の国語の記述問題は、「文章の言葉+自分の言葉」で正答を作っていくものが数多くあります。それも、200字ほどの長さで。
そういった大学を目ざしている人は高校受験のときから練習しておいたほうがいいでしょう。
では、こうした難問で正答が書けるようにするには、どんなことが必要なのでしょう。
それは多読と語彙力のアップです。読解力を高めるために精読は行っているので、あえて精読をやる必要はありません。説明文や論説文などでどんなジャンルの問題が出ても、対応できるように文章に書かれたことがらへの十全案な知識を持っておく。そのための多読です。宇宙に関する話題の文章が出題されたとき、NHKの番組や新聞の特集記事で語られるレベルの知識を、浅くていいから持っておくことはとても有利なことです。
そしてそれらの文章を読んだとき、出てきた言葉をノートに書き留めておく。意味もわからないものは書いておく。辞書に例文などが載っている場合は例文も書いておく。こうしておけば語彙力が高まり、自分の言葉で文章が書きやすくなります。
小説を読んでの感想文は、記述対策にはならない
小説の記述問題を得意にするために、感想文を書くことを強く推す教師がいますが。それは見当違いです。
小説の読後の感想文や批評文は、ぜひ行わなければならないことがらの一つですが、それは作文力を高めるためにやることです。
また、入試とは関係ないですが、メディアリテラシーへの対策としても有効です。新聞やテレビで、マスコミやマスメディアは平気で嘘をつくし、世論を誘導しようと絶えず試みてもいます。
もちろんマスコミ・マスメディアは非常に大切なものです。正義ある報道をしてくれたりもします。
ですが企業なので、自社の不利益になるようなことは何も言いません。
たとえば、節電。原発事故で電力需給が厳しくなり、テレビ局はどこも節電、エアコンのスイッチをまめに切るように言いました。ですがテレビも切ってくださいとはどこもいってません。テレビの消費電力は、エアコンの十倍ほどもあるのです。節電ならばエアコンはつけてテレビを切るのがはるかにいいのです。エアコンは切れば熱中症のおそれもありますが、テレビはありません。
だけどもテレビを切れとは言わない。新聞でほんの少し書いてあるだけ。テレビ局が不利になりますから、言うはずがありません。こういうメディアの不作為な嘘を見抜くのがメディアリティラシーです。新聞やテレビの言うことは全て正しいと鵜呑みにしない。
こうした力は本を読んだあとの感想文や批判文を書く作業で培われます。本は小説でも、一般的な書物でもかまいませえん。なので感想文・批判文を書くことはとても大事なのです。
それに400字~800字で自由作文を書くときに、かなり役立ちます。作文対策は、感想文・批判文を書くことにあります。
ですが、小説文の記述対策にはならない。それは感想文は書物の全体に対して書くもので、小説の記述問題は、一つの場面での登場人物の心理や心情というきわめて狭い範囲について書くからです。
小説文の記述対策は、解説が詳しく書かれた記述対策の問題集を繰り返しやることを薦めます。